光母子殺害・弁護側会見
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−−判決には、被告人が反省を深めさえすれば死刑が回避できた、とも読み取れるくだりがあるが

  安田弁護士「私たちは被告人と日々接触してきました。彼は事実を見直すことで反省を深めてきた。彼は死というものに親和感を持ち、投げやりに近かったが、自分が何をやり、どれほど被害者を苦しめたのか理解してきました。その中でみた被告人の“像”ときょう裁判所がいった“像”は違うんです。それに事実そのものが違うということは法医学者が指摘している。少なくとも科学的分析からすると、揺るぎないどころか、大いに揺らいでいる。それを揺るぎないという前提で論じること自体、矛盾している。事実が違うのに反省は無理ですよ。事実は事実として認められて初めて反省の緒につけるんです」

  《反省の前提となる事実認定を裁判所が誤ったため、本当の反省にはつながらないと主張する安田弁護士。被告の内面に言及し始めるとやや興奮したのか次第に声がうわずってくる》

  安田弁護士「けれど今の彼は違うんですよ。『裁判所はどう認めようと私の贖罪(しょくざい)と反省は変わらない』といっているわけだから。私はさらに大きく成長したなと思っているんです。判決では反省するように期待したといっているが、むしろ彼はそれを超えたと思っている。最高裁と今の判決を見ていると、被告人がこの法廷で反省の意を表すれば裁判所の判断は変わったのか、となるわけですよ。本人が反省すれば判断は変わったというのは荒唐無稽(むけい)といっていい。今まで重大な事件を起こしたほとんどの人が本当に反省していましたが、結果の重大性ゆえに死刑になってきたんです。その歴史を今日の判決は無視しているんだろうと思います」

  《会見は、安田弁護士が代表してほとんどの質問に答える形で進んだ》

  −−今回の死刑判決は厳罰化の流れに影響すると思うか

  安田弁護士「彼の事件は厳罰化のために使われたといってもいい。最高裁は、3年半寝かした末、裁判長がやめる間際になって判決を出して、やむを得ないときだけ死刑は許されるという従来の判決をひっくり返した。(今回の判決で)凶悪な事件は原則として死刑なんだ、死刑を回避するためにはそれなりの合理性と正当性がなければならないと、立証責任を転換してしまった。『無罪推定の原則』とか『疑わしきは被告人の利益』といった哲学にまったく反している」

  《安田弁護士は来年5月に始まる裁判員制度を見据え、今回の判決に懸念を表明した》

  安田弁護士「今後厳罰化はますます加速していく。実に危険な状態になってきたなと思いますし、来年からの裁判員制度でも大きな影を落とすだろう」

(4)へ続く
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