秋葉原殺傷 第16回公判
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《約30分間の休廷を挟み午後3時20分、元派遣社員の加藤智大(ともひろ)被告(27)が再び、東京地裁104号法廷に入ってきた。傍聴席に向かって一礼すると、弁護人席前の長いすに着席。村山浩昭裁判長に促され、加藤被告が証言台の前に座ると、村山裁判長は「では弁護人の方で続けて下さい」と再開を告げた》
弁護人「車で自殺しようとしたことがありましたね」
被告「はい」
弁護人「その日の行動を説明してください」
被告「朝に、弘前市内のコンビニで酒を飲んで、速度が出せるバイパスに向けて出発しました」
弁護人「それから」
被告「その前に、自殺するというメールを青森の友人に送り、母親に自殺をするという電話をしました」
弁護人「内容は?」
被告「トラックに車でつっこんで自殺をするといった内容です」
弁護人「どうして送ったのですか」
被告「交通事故でなく、自殺ということをはっきりさせるため、あえてメールを送りました」
弁護人「母親への電話ではどんなことを話しましたか」
被告「これから自殺するということを伝えました」
弁護人「反応は?」
被告「何か言っていましたが、途中で切りました」
弁護人「どうして電話をかけたのですか」
被告「青森の友人と同じで、事故でなく、自殺ということをはっきりさせるためです」
《弁護人は、加藤被告が自殺しようとした経緯について質問を続ける》
弁護人「酒を飲んで車を運転したことはこれまでありましたか」
被告「ありませんでした」
弁護人「どれぐらい飲みましたか」
被告「缶で1本か2本です。お酒が弱いのでかなり飲んだ方になります」
《村山裁判長が質問に割って入る》
村山裁判長「(飲んだ)お酒の種類は?」
被告「カクテル的な甘いお酒です」
弁護人「弘前のバイパスに向かって、その後は?」
被告「決意して、いよいよこれからという時にメールの着信があり、気になったので車を止めようと思いました。Uターンしようとしたところ、縁石に車をぶつけて走行不能になりました」
《被告が事故を起こした状況の質問が続く》
弁護人「走行不能になり、自殺の考えは変わりましたか」
被告「あきらめず、応急修理をしてもらおうと考えました。レッカーを呼んで、ディーラーに車を持って行き、一時的に走れるようにしてもらおうと考えました」
弁護人「何のために」
被告「もう一度自殺するためです」
《自殺に対する執着心を感じさせるが、結局、ディーラーに車の修理を断られたという》
弁護人「何を考えたのですか」
被告「自殺をあきらめることになりました」
弁護人「この車を使うこと以外は考えなかったのですか」
被告「考えませんでした」
弁護人「なぜ?」
被告「メールで予告しているし、それ以外の方法で自殺するわけにはいかないと考えました」
《その後、加藤被告は事故車を実家に移動させた》
弁護人「実家に帰るのは何年ぶりでしたか」
被告「短大を卒業して以来、3年ぶりぐらいになります」
弁護人「母親に会って何と言われましたか」
被告「『良く帰ってきたね』と」
弁護人「他には?」
被告「『ごめんね』と言われました。おそらく自分の幼少のころにしたことを謝ったのだと思います」
《加藤被告は母親の話になると、ずっと膝の上に置いていた手で顔をかくなど、少し落ち着きがなくなる様子をみせる》
弁護人「何に謝ったのですか」
被告「はっきりしませんが、そう感じました」
弁護人「言葉以外は」
被告「ハグされました」
弁護人「抱きしめれたということ?」
被告「はい」
弁護人「物心ついてからハグされた記憶は?」
被告「覚えがないです」
弁護人「今後について何か言われましたか」
被告「『家にいていい』と言われました」
弁護人「この日、自殺をしようとしたことについて話しましたか」
被告「一度精神病院にいってみたいと話しました」
《被告が再度顔をかく》
弁護人「何で精神病院に行こうと思ったのですか」
被告「自分でも何で自殺しようと思ったのか分からず、おかしいと感じたからです」
弁護人「母親は何といいましたか」
被告「『そんな所にいっても意味がない』と言われました。結局いけませんでした」
《今度は自殺を予告するメールを送った友人の話に移る。加藤被告は、メールや電話の返答があったことを明かし、迷惑をかけたとして反省の弁を述べる》
弁護人「メールや電話の返信を受けてどう思いましたか」
被告「心配をかけたり、迷惑をかけて申し訳なかったと思いました」
《少し間をおいて、男性弁護人は、被告の実家での生活について質問を続ける》
弁護人「どんな生活を送っていましたか」
被告「良く覚えていないが、ぼんやりとしていました。実家には母親と二人で暮らしていました」
弁護人「仕事をしようという気持ちはありましたか」
被告「無気力というか、何も考えられない状態でした」
《その後、加藤被告の祖父の葬式で送迎のため車を運転した際に、親戚から運転をほめられたことで、運転手を目指すようになった経緯を説明していく》
弁護人「親戚に車の運転をほめられてどう感じましたか」
被告「とても嬉しく思って、バスの運転を考えたり、トラックで修行をしようと考えたりしました」
弁護人「無気力だった生活から仕事をしようと思うようになった」
被告「はい」
《祖父の葬式後には、自殺のメールを送った友人らを実家に呼び、酒を飲んだ話に変わる》
弁護人「何か自殺のことについて話しましたか」
被告「酔った友達から、『自殺なんかするな』と説教されました」
弁護人「どう思いましたか」
被告「ありがたくもあり、申し訳なくもありました」
《加藤被告は、運転手を目指し、就職活動に至る経緯を述べていく。運転経歴が必要でなかなか就職先が見つからなかったが、平成19年1月に地元・青森市の運送会社に就職した》
弁護人「どんな仕事内容だった?」
被告「牛乳の配達で、自分のトラックを運転し、決められた時間に、決められた場所に、決められた通りに納入する仕事でした」
弁護人「仕事自体をどう感じていましたか」
被告「やりがいはありました」
弁護人「どのような点が?」
被告「トラックの荷物を預けられて、信用されていると感じたことと、運転自体も楽しいものでした。何より自分の荷物を待っている人がいることが嬉しかったです」
《同僚との付き合いについて質問が及ぶ》
弁護人「同僚とはどのような付き合いをしていましたか」
被告「仕事ではあまり接点はありませんでしたが、休日は居酒屋に集まってお酒を飲んだりしました」
弁護人「友達に何かしてあげたことはありましたか」
被告「UFOキャッチャーでとった景品をあげたりしました。喜んでいる様子をみて嬉しかったです」
弁護人「逆に友人から何かもらうことはありましたか」
被告「バレンタインデーに女性からプレゼントをもらいました」
弁護人「あなただけにですか」
被告「みんなもらいました」
弁護人「お返しはしましたか」
被告「1カ月後に、通販で珍しいお酒を見つけたので、それをあげたら、喜んでいたようでした」
弁護人「他に、イベントとか、友人との思い出は?」
被告「花見をしたことがありました」
法廷ライブ12に続く
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