秋葉原殺傷 第16回公判
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《女性弁護人が加藤智大(ともひろ)被告(27)の小学校時代について質問を続ける》
弁護人「小学校のころに仲の良い友人はいましたか」
被告「いました」
弁護人「何人ぐらい?」
被告「数人ですね。一緒に遊ぶような友達はいました」
弁護人「友人が家に遊びに来ることもありましたか」
被告「最初はありました」
弁護人「最初は、というのは?」
被告「友達が帰ると、母親がこれ見よがしに部屋の掃除を始めるので、『家に人を入れるな』ということだと思い、友達を連れて行かなくなりました」
弁護人「小学校時代、友人とけんかをしたりトラブルになったことはありますか」
被告「小学校1年生のころだと思いますが、友達をひっかいたことはあります」
《20年以上前の話だが、加藤被告はよどみなく答えていく》
弁護人「どうしてひっかいたのですか」
被告「集会か何かで列になったときにはみ出したクラスメートがいて、『ちゃんと並べよ』という意味でひっかきました」
弁護人「カッとなったということですか」
《加藤被告は少し考えるように間を置いた後、質問に答えた》
被告「暴力を振るいたかったわけではなく、『ちゃんと並べよ』ということを伝えたくて、そういう行動を取りました」
弁護人「言葉で伝えようとしなかったのですか」
被告「そういう発想はありませんでした」
弁護人「他に小学校時代、友人に暴力を振るったことはありますか」
被告「低学年の時ですが、工作の時間が終わって誰がのりを片づけるかで2人が争っていたので、この2人をげんこつで殴って自分で片づけたことがあります」
弁護人「なぜ手が出たのですか」
被告「複数ある手段から選んだというわけではありません」
弁護人「カッとなると手が出るのですか」
被告「単純にそうではありません」
弁護人「伝えたいことがあると手が出るのですか」
被告「…それで伝えようとしました」
《続いて、弁護人が「中学校時代のことについて質問します」と前置きした後、質問を始めた》
弁護人「中学校時代のことで、何か覚えていることはありますか」
被告「中学校でソフトテニス部に入りたいと母親に言ったところ、『どうしてだ』と言われましたが、私はすぐに入部したかったので粘ったところ、試験で10番以内になることを条件にされました」
弁護人「なぜソフトテニス部に入りたかったのですか」
被告「当時通っていたそろばん教室の1つ上の先輩がソフトテニス部に入っており、学校帰りにその先輩に見つかって部員として登録されてしまったのです」
弁護人「やりたくて入ったわけではないのですか」
被告「はい」
弁護人「ソフトテニスをやってみてどうでしたか」
被告「楽しくないわけではありませんでした」
《積極的にソフトテニスを始めたわけではなかったようだが、弁護人によると、加藤被告は入部後、大会で入賞するなど頭角を現していったという》
弁護人「そのうち活躍するようになり、お母さんの態度は変わりませんでしたか」
被告「はい。それまではことあるごとに『(部活を)やめなさい』と言っていたが、秋の新人戦で入賞し、新聞に名前が載ったところ、手のひらを返したように応援するようになりました」
弁護人「他に中学時代にあったお母さんとのことで、覚えていることはありますか」
被告「はい。お弁当の件です。贅沢な話ではあるんですが、無駄に豪華で量も多い弁当を出されていました」
弁護人「豪華なお弁当で良かったのでは?」
被告「豪華過ぎるものだったので、クラスメートの視線が冷たいというか…」
弁護人「うらやましがられていたということですか」
被告「最初はそういう感じでしたが、やがて冷たい視線が刺さるというか…」
《幼い頃から母親に厳しく教育されていたという加藤被告。母親への複雑な心境を打ち明けた》
弁護人「中学時代、学校の成績は良かったのですか」
被告「はい。母親に教材を与えられてやっていました」
弁護人「10番以内の成績という母親との約束は守れていたのですか」
被告「秋の(ソフトテニスの)新人戦までは守っていましたが、それ以降は(10番以内という条件は)なくなりました」
弁護人「その後はどのくらいの成績だったのですか」
被告「それでも20番前後程度だったと思います」
弁護人「進路についてはどうでしたか」
被告「(母親の)母校に行くことがすでに決定されていた感じです」
《加藤被告は母親の出身校である県立青森高校に進学している》
弁護人「あなたも青森高校に行きたかったのですか」
被告「むしろ行きたくありませんでした。工業高校か地元の私立の高校に行きたいと思っていました」
弁護人「それはなぜですか」
被告「車が好きだったということと、試験で点を取るためのお勉強ではなく、もっと現場に近いものが…。工具を持ちたいと思っていました」
《加藤被告は高校を卒業後、岐阜県にある自動車整備士を養成する短大へ進学している》
弁護人「お母さんにはそのことを話したことはありますか」
被告「ありません。話したところで、青森高校に行かせられることは明らかでしたから」
弁護人「青森高校でもいいや、という気持ちもあったのですか」
被告「(実家から)近いからいいや、という思いと、母親と大学に合格したら車を買ってもらえるという約束をしたので」
弁護人「それが励みになっていたのですね」
被告「はい」
《この後も、加藤被告の中学時代の友人関係についての質問が続く。加藤被告は部活の仲間と集まって遊ぶ一方、中学3年ごろから「クラスの中で一人浮いていると感じるようになった。避けられていた」と説明。クラス委員などに選ばれたのも「立候補してやったというより、やらされていた」と話した》
《続いて、弁護人は加藤被告の“恋愛遍歴”についても質問していった》
弁護人「中学の頃、女の子と付き合ったことはありますか」
被告「はい。覚えているのは2人です」
弁護人「初めて付き合ったのは?」
被告「中学2年のころです。クラスメートです」
弁護人「どんなお付き合いでしたか」
被告「一緒に学校から帰るとかです。何となく始まって、何となく終わりました」
弁護人「2人目は?」
被告「中学3年の時です。やはり何となく始まって何となく終わった感じでした」
弁護人「自然消滅したということですか」
被告「いいえ。母親に『あの子と付き合うのはやめなさい』と言われました」
弁護人「なぜ付き合っているのが、お母さんに分かってしまったのですか」
被告「自室の机の引き出しの中の手紙を発見されたのです」
《母親は加藤被告の机を勝手にのぞいて手紙を見つけ、「付き合いをやめないと転校させる」と迫ったという》
弁護人「反抗はしなかったのですか」
被告「したところで転校させられるのは明らかなのでしませんでした」
弁護人「中学校時代にお母さんにしたことを覚えていますか」
被告「2年か3年の時に一度殴りました」
《母親を殴った理由について弁護人が尋ねると、加藤被告は「ちょっと経緯が長くなりますがよろしいですか」と断り、説明を始めた》
被告「食卓で黙々とご飯を食べていたところ、母親が何かのことで私に怒り出し、頬をつねったり髪をつかんで揺さぶったりしていたのですが、私はそれを無視していました。その後、私が洗面所に移動したところ、母親がついてきて、本格的に殴りだしたので反射的に手が出てしまったのです」
弁護人「どんな風に殴ったのですか」
被告「右手で。グーで。力いっぱい、左の頬のあたりを殴りました」
弁護人「お母さんに暴力を振るったのは…」
被告「後にも先にもこれ1回です」
弁護人「どんな気持ちでしたか」
被告「悲しかったです。何でこうなっちゃうんだろうという気持ちでした。涙が流れました」
《弁護人が「質問を一度ここで切りたいのですが」と提案すると、裁判長が休廷にすることを告げた。約1時間半の休憩をはさみ、午後1時半から引き続き被告人質問が行われる》
法廷ライブ8に続く
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