秋葉原殺傷 第17回公判
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《東京・秋葉原の無差別殺傷事件で殺人罪などに問われた元派遣社員、加藤智大(ともひろ)被告(27)の第17回公判が29日午前10時前、東京地裁(村山浩昭裁判長)で始まった》
《この日の公判でも、前回に引き続き、加藤被告の被告人質問が行われる予定だ》
《前回公判では、加藤被告が今年1月28日の初公判以来、半年ぶりに口を開き、「つぐないの意味で、事件を起こした理由の真相を明らかにすべく、すべてお話しする」と宣言。生い立ちから家庭環境、人格形成、インターネットの掲示板依存など、犯行に至るまでの経緯について、はっきりとした口調で語った》
《加藤被告は犯行動機について「インターネットの掲示板で嫌がらせをしてきた人たちに事件を起こすことで本当に嫌がっているということを伝えたかった」と証言。さらに、事件を起こした原因について「私の考え方、掲示板での嫌がらせ、掲示板に強く依存した私の生活の在り方」と3つ挙げた》
《犯行の背景に「言いたいことや伝えたいことをうまく表現できず、言葉でなく行動で示して分かってもらう」という考え方があったとし「母親の育て方が影響している」と分析。「トイレに閉じ込められた」「窓から落とされそうになった」「風呂で九九を間違えれば湯船に沈められた」「食事が遅いと食事をチラシや廊下にぶちまけられた」など、加藤被告が「屈辱的」と感じ、父親も「異常」と表現した母親の行き過ぎとも思える「しつけ」の数々が明らかにされた》
《弁護人とのやり取りからは、説明もなく厳しく当たる母親の「しつけ」により、自分の意見を伝えず突然攻撃的になる「行動パターン」が形成され、事件を引き起こしたという構図が浮かび上がった》
《被告人質問2日目となる今公判。加藤被告は、何を語るのだろうか》
《東京地裁最大の広さを誇る104号法廷は、傍聴人でほぼ満席状態となっている。午前9時57分、村山裁判長に促され、加藤被告が向かって左手の扉から姿を現した。これまで同様、黒のスーツに白いワイシャツ姿。少しつまずいて一瞬驚いたような仕草(しぐさ)を見せたが、いつものように傍聴席に向かって一礼し、向かって左手に位置する弁護人席の前の長いすに腰を下ろした。無表情で落ち着いた様子だ》
裁判長「それでは、開廷します」
《村山裁判長が、前回に引き続き、弁護人質問を行うことを告げ、加藤被告に対して証言席に座るよう促した。加藤被告はゆっくりと立ち上がって着席。マイクを手前に近づけて調整した》
《男性弁護人が立ち上がった。前回の続きで、加藤被告が「自分の帰る場所」と表現するほどのめり込んでいたインターネットの掲示板について質問していく》
弁護人「ずっとダイサンという掲示板を利用していたのですか」
被告「いや、そうではないです。キュウカイという掲示板を扱うようになりました」
《前を見据え、大きくはないが、はっきりとした口調で答える加藤被告》
弁護人「どうしてその掲示板を使うことになったのですか」
被告「なぜだったか分からないのですが、ダイサンを追い出されることになって、キュウカイに引っ越しをすることになりました」
弁護人「時期はいつごろですか」
被告「平成19年の春ごろだったと思います」
弁護人「キュウカイはどういう掲示板ですか」
被告「それまでのダイサンと変わらず、雑談したり、ネタがあったり、そういう掲示板です」
弁護人「どのくらいの人数がいたと思いますか」
被告「十数人いたと思います」
弁護人「あなたはどういう風に利用していたのですか」
被告「ダイサンのころと変わらず、スレッドを乱立するような使い方です」
《独特の「掲示板用語」を使う加藤被告。弁護人は一般の人に分かるように説明を求める》
弁護人「乱立とはどういうことですか」
被告「掲示板上にスレッドを連続して大量に作成するような使い方です」
弁護人「実際に書き込んだ内容は?」
被告「これも変わらずネタです」
《加藤被告は左手で、左ほおの辺りをポリポリとかいた》
弁護人「そこでは、ダイサンと同じようにずっと乱立というやり方だったのですか」
被告「そうではなく、あるとき、掲示板の管理人から怒られ、乱立をやめるようになりました」
弁護人「どういうやり取りがあったのですか」
被告「ある日、レス禁といって、掲示板に書き込みができないようになり、管理人にどうしてレス禁になるのか問い合わせたところ、『乱立は迷惑だ』と。それで私も反省したということです」
弁護人「どういう風に利用することになったのですか」
被告「乱立をやめて、一つだけ自分のスレッドを立てて、そこに次々と書き込みをしていくように変わりました」
弁護人「内容自体は?」
被告「内容自体、変化はないです」
弁護人「ほかの掲示板のスレッドや書き込みを見ることはなかったのですか」
被告「いや、見るんですが、それに対しても、普通は書き込みをするんですが、あえて、自分のスレッドに返信するように。ちょっと回りくどいですが、引きこもったような」
《インターネットの世界なのに「引きこもり」という表現を使う加藤被告。弁護人はさらに掘り下げて質問していく》
弁護人「掲示板に反応がないと、どういう気持ちになりましたか」
被告「返信や書き込みがないと、掲示板に誰もいないということですから、1人になってしまったような孤独を感じて、何か不安な気持ちになりました。自分のスレッドにおかしな書き込みを連発したり、乱立したりしました」
弁護人「どうしてそういうことをしたのですか」
被告「意図的ではないのですが、不安感が紛れるような気がして…」
弁護人「ネタを書き込んでいたということですが、本当の気持ちではないものですか」
被告「いや、そういうものではないです」
弁護人「作り話ですか」
被告「いや、実際のこともあります」
弁護人「どういった内容か説明してください」
被告「本心もあれば、おもしろおかしく、まったく考えていない出来事も。実際にはなかったことを、作り話としておもしろおかしく誇張したり、いろいろな書き方をしました」
弁護人「自分のスレッドに書き込んでくれた人についてどう思いますか」
被告「数あるスレッドの中で選んで入ってきて書き込みをしてくれることは、彼らの中で私の優先順位が高いので、うれしく思いました」
弁護人「ほかの人が書き込んでくれることをどう感じていましたか」
被告「現実では相手の方から遊びに来てくれることはなかったのですが、掲示板では、より親しく感じていました」
《弁護人は、少し間を置いて質問を続ける》
弁護人「掲示板のやり取りで、あなたが求めていたのは本当の気持ちですか」
被告「そうではなく、お互い気を使わないで、気楽にというか、そういう環境を望んでいました」
弁護人「一日の生活で、掲示板を利用しないということは考えられますか」
被告「考えられないです」
法廷ライブ2に続く
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