秋葉原殺傷 第17回公判
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《“群馬の彼女”とのやりとりをネットの掲示板に書き込んだ加藤智大(ともひろ)被告(27)。その書き込みが彼女に見つかってしまう。男性弁護人は彼女との仲が悪くなり、自殺を考えるようになった経緯について聞いていく》
弁護人「彼女は書き込みを見つけてどういった対応でしたか」
被告「『私のこと何だと思っているの』と激怒のメールが来ました」
弁護人「それでどうしたのですか」
被告「そのスレッドを封鎖して、ハンドルネームを使うのをやめました」
《彼女とのやりとりを境に、加藤被告はハンドルネームの使用をやめ、「名無し」として利用を続けたという》
弁護人「『名無し』として書き込みをして、掲示板の利用者は同じ人が書いていると分かるのですか」
被告「分からなくなってしまいました」
《弁護人は質問を選ぶように、黙り込んだ》
《数秒の沈黙の後、掲示板の話から、東京に向かう話に質問を変える》
弁護人「その後、東京に向かったのですか」
被告「はい」
弁護人「東京では何がありましたか」
被告「車を上野の駐車場に乗り捨てる形で入れて上野と秋葉原の間をプラプラしていました」
弁護人「それでどうしましたか」
被告「当時、私が中央線だと思っていた総武線のホームに入りました」
弁護人「それでどうしましたか」
被告「中央線が人身事故で止まっているというアナウンスが流れました。電車が止まっていたので自殺が出来ないと思ってホームを出ました」
弁護人「それでどうしましたか」
被告「車に戻り、車の中で寝ていれば死ねるかなと思い、車にいました」
《しばらく車にいた加藤被告。駐車場の管理人と警察官が話しかける。加藤被告は警察官の質問に「自殺を考えている」と話す》
弁護人「警察官には何をしているのかと聞かれ、何と答えましたか」
被告「自殺を考えていると言いました」
弁護人「あなたが自殺を考えていると言って警察官は何と言いましたか」
被告「『自殺はやめよう』と説得をされました」
弁護人「あなたが使っていた車はどんな車でしたか」
被告「父の車を借りて使っていて、青森ナンバーでした」
弁護人「警察官はどこの出身でしたか」
被告「確か北海道で同じ北国の出身という話になりました」
弁護人「警察官は何と言っていましたか」
被告「自殺を思いとどまるよう説得しようとしていました」
弁護人「何と説得されましたか」
被告「どう言われたかははっきり覚えていません」
弁護人「そのときの警察官の調書があります。そこには『生きていれば辛いこともあるが楽しいことは必ずある。君はがんばりすぎだから肩の力を抜いた方がいい』と言われましたね」
被告「そうだったかもしれません」
弁護人「あなたはそこで泣きましたね」
被告「泣いていたように思います」
弁護人「そのとき駐車場の管理人はどういうことを言っていましたか」
被告「とりあえず、車を出してくれと言われました」
弁護人「駐車料金を延滞していましたね」
被告「はい」
弁護人「いくらですか」
被告「3万3500円だったと記憶しています」
弁護人「駐車代金をどうしましたか」
被告「そのときに持ち合わせがなかったので、借用書を書きました。管理人の方は『年末まで返してくれればいいから』と言ってくれました」
弁護人「どう思いましたか」
被告「そのように自分を信頼してくれて、なんとしても応えないといけないと思いました」
弁護人「車で死のうという考えはどうなりましたか」
被告「なくなりまして、スイッチが入ったように前向きになりました」
弁護人「どういう思いからですか」
被告「管理人の方に駐車料金を返すことが生きる目標に設定されました。そういっても過言ではないです」
《事件からさかのぼること約半年前の、平成19年11月半ばの駐車場での出来事をきっかけに、前向きな考えになった加藤被告。その日のうちに秋葉原の派遣会社に行き、事件前まで勤めていた「関東自動車工業」での仕事を決める。2日後に仕事を始める》
弁護人「どういう仕事をしていたのですか」
被告「車のボディの塗装の最終検査です」
弁護人「どこに住んでいましたか」
被告「アパートを借りて寮に入ることになりました」
弁護人「車はどうしましたか」
被告「そのまま乗っていました」
弁護人「仕事内容を詳しく教えてください」
被告「目で見たり、手でなでたりしてボディの表面に不具合がないかチェックします。不具合があれば端末に入力していました」
弁護人「勤務形態はどうですか」
被告「朝6時から昼3時までと、昼4時から翌日の0時40分までの2交代で、月から金まで交代交代にやるシフトです」
弁護人「残業はありましたか」
被告「夜勤のときは3、4時まで残業することもありました」
弁護人「1日の検査は何台くらいですか」
被告「400台くらいです」
弁護人「どんな職場環境でしたか」
被告「暑い現場でした」
弁護人「気温としてはどのくらいですか」
被告「40度を軽く超える現場でした」
弁護人「働き始めたころの仕事の負担はどうでしたか」
被告「正直久しぶりの仕事で相当体がきつかったという覚えがあります」
《仕事のきつさに一時はやめることも考える加藤被告だったが、駐車場の管理人との約束を心に誓い、仕事を続け、年末に約束を果たす》
弁護人「お金を返す約束はどうなりましたか」
被告「年末には全額をお返ししました」
弁護人「どういう方法ですか」
被告「手みやげを用意して直接事務所に行ってお返ししました」
弁護人「電話とか郵送とかは考えませんでしたか」
被告「はい」
弁護人「直接返そうと」
被告「はい」
法廷ライブ5に続く
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