秋葉原殺傷 第18回公判
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《女性検察官の加藤智大(ともひろ)被告(27)への質問が続く。たびたび自殺を考えた加藤被告の心境について突っ込んだ質問を重ねる。検察官はインターネットの掲示板で知り合った兵庫県の女性と会う約束をし、自殺を思いとどまった理由を尋ねた》
検察官「兵庫の女の子に『半年後に遊びに行く』といわれた、そんな簡単なことで(自殺する)気持ちが変わるの?」
被告「生きる希望があれば自殺しないと思います。自分自身、先の予定ができるのは生きる希望になること。嫌いな人ではないし、少なからず好意もある。非常に強力な理由になります」
検察官「彼女が18歳と分かって自殺をまた考えた。そんな簡単なことで気持ちが変わるの?」
被告「彼女は20歳になったら(遊びに行く)と言っていました。誕生日が19歳であれば半年後だったが、18歳ならば1年半後。(自分にとって)半年はギリギリの約束です。1年半後はどうなるか分からないので、予定というわけにはいかなかったです」
検察官「(東京のJR)中央線に飛び込んで自殺しようとしたのはたまたまなのですか」
被告「はい」
検察官「自殺する方法がいくらでもある。なぜ中央線なの?」
被告「なぜ、中央線と聞かれてもよく分からないです。このときは固執してしまっていて、ほかの電車は考えられなかったです」
検察官「その次は車の中で寝ていれば、死ねると話していますね。こんな方法で自殺できるの?」
被告「自殺の方法としてはわれながら消極的な方法だと思います。でも、当時は真剣でした」
検察官「自殺しようと決めた日の前に群馬県の女性と会っていますね。女性は法廷で『かまってちゃん』と呼んでいたけれど、この表現はどういう人のことを言うの?」
被告「私自身、『かまってちゃん』と思っていません。『かまってちゃん』とは薬を大量に飲んだり手首を切ったり、こういうことをすることで優しくしてもらう、『かまってちゃん』というか『困ってちゃん』という人と認識しています」
検察官「あなた自身はそういう人ではない?」
被告「はい」
《検察官は困惑したような表情で、腕組みをしたまま質問を続ける》
検察官「別の質問をします。事件を起こした理由は、(掲示板で)荒らしをした人にいやがっている気持ちを伝えるアピールだというの」
被告「はい」
検察官「ネット上のなりすましや荒らしが動機、それでいいの?」
被告「はい、そうです」
《検察官は腕組みした手の片方を顔に当て、考えこんでいるようだ》
検察官「自分のことが嫌いと言っていたけれど、自分の何が嫌いなの?」
被告「全部です。全部という表現をするしかありません」
検察官「容姿とか性格とか、取り上げることはできないの?」
被告「同じようなことを掲示板でも突っ込まれました。自分のここが嫌いとかではなくそのまま自分が嫌いと言うほかはありません」
検察官「顔や容姿は事件の事情に関係ないの?」
被告「関係ありません」
検察官「彼女ができなかったことはコンプレックスではないの?」
被告「できないのはコンプレックスというけれども、自分で(彼女が)できないと思っていないです」
検察官「事件とは関係ないの?」
被告「はい」
検察官「顔の容姿のコンプレックスはいままでになかったの?」
被告「過去にはありました」
検察官「何かエピソードがあるの?」
被告「出会い系サイトで知り合った女性に、あるとき『顔写真を送ってほしい』と言われたので送ったところ、音信不通になった。このときはコンプレックスを持ちました」
検察官「いつのこと?」
被告「平成18年の9月ごろです」
検察官「9月ごろ、ふーん」
《検察官の質問に、加藤被告は姿勢を崩さずに淡々と答えていく》
検察官「彼女がほしいと思っていたのは事実なの?」
被告「事件直前のことでしょうか?」
検察官「当時はどう思っていたの?」
被告「真剣に思っていた時期もありますし、そうでない時期もあります」
検察官「真剣に思っていたのはいつ?」
被告「平成19年の夏ごろです」
検察官「どうして真剣に彼女がほしいと思ったの」
被告「実家を追い出され、強烈な孤独を感じていました。手っ取り早い(孤独を解消する)方法です」
検察官「結婚したいという気持ちはありますか」
被告「ありました」
検察官「彼女はできなかったの?」
被告「当時はできませんでした」
検察官「彼女ができなかった悩みは持っていなかったの?」
被告「真剣に考えた時期はそうだったのですが、事件前はと聞かれるとそうではないです」
検察官「いつまで真剣に彼女がほしいと思っていたの?」
被告「19年度中は考えていたと思います」
《検察官はまた腕を組んで考え込んだ。調書と食い違う加藤被告の法廷の供述にいらだっているようにも見える》
検察官「群馬県の女性に『彼女がほしい』と話しましたね?」
被告「話したことは覚えていませんが、調書によると、話したようです」
検察官「群馬県の女性に自分のことを『キモオタ』『ブサイク』と話しましたね。自分のことをそう思っていたの?」
被告「その当時はそう思っていたと思います」
《検察官は「はあー」と小さくため息をついた》
検察官「コンプレックスや彼女がほしい悩みを掲示板に書き込みましたか」
被告「書いた覚えはありません」
検察官「(掲示板の)スレッドにはブサイクなどと書いていますね」
被告「悩みといいますが、自分の中で消化できてしまっていました。ブサイクという事実を受け入れた自虐の状態で、悩んでも仕方がないのです」
検察官「あなたは(自虐)ネタで書いても真剣に返事をする人もいますよね」
被告「ネタをネタと分からず『マジレス』というか真剣に書き込みをする人もいました」
《検察官は話題を掲示板から、女性に抱きついたことに変えた》
検察官「19年10月の夜に群馬県の女性のおなかに抱きついた理由はなに?」
被告「何がしたかったのかと聞かれると、抱きつきたかったと答えるしかありません」
検察官「性欲はなかったの?」
被告「くっついていると、安心感のようなものがあります」
検察官「セックスしようとかエッチなことをしようとかそういう気持ちはなかったの?」
被告「はい」
検察官「□□検事(法廷では実名)には『お尻に性器を押しつけて何回か腰を振った』と話していますが」
被告「よく分かりません」
《加藤被告は姿勢を変えることもなく、前を見据えたまま淡々と答えていく》
検察官「抱きついたときにコンドームを持っていましたね?」
被告「持っていないです」
検察官「群馬県の女性がそう証言してますね」
被告「はい」
検察官「本当はセックスしようと思っていたのではないですか」
被告「そうではありません」
検察官「隠そうとか格好つけようとか、そういうことを考えていない?」
被告「この期に及んでもそんなことをしてもしようがないです」
《ここで検察官が女性から男性に変わった。検察官は加藤被告に『自殺する』と母親にメールを送った理由や、『容姿にコンプレックスをもっていない』との供述などを確認した》
検察官「出会い系サイトを使ったことはある?」
被告「あります」
検察官「女性と会う目的は? 肉体関係やおつきあいをしたいとかいろいろあるけれど…」
被告「とにかく女性と知り合いたかったです」
法廷ライブ14に続く
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