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秋葉原殺傷 第18回公判
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《加藤智大(ともひろ)被告(27)が東京・秋葉原の歩行者天国で17人を殺傷した後、現場で逮捕され警視庁万世橋署に連行されてからの取り調べ状況について、弁護人からの質問が続いている。事件を起こした動機を中心に取り調べが行われた様子が、淡々と語られていった》

弁護人「警察署で警察官からはどういうことをいわれましたか」

被告「『なんでこんなことをしたんだ』と怒鳴られました」

弁護人「そう聞かれてあなたはどう答えましたか」

被告「事件直後は頭からいろんなものが吹っ飛んでいて、何も答えられず無言でした」

弁護人「それで?」

被告「『黙っていないで何か言え』といわれ、焦った感じで『疲れました』と言葉が出ました」

弁護人「それで?」

被告「『何に?』と聞かれました」

弁護人「それに対しては?」

被告「また考え始めたところ、『人生に』という言葉が出てきました」

《続いて弁護人の質問は、取り調べの内容から、取り調べをした警察官がどう入れ替わったのかに移る》

弁護人「最初に取り調べをした警察官が取り調べを進めたんですか」

被告「そうではなく、その後は、ずっと取り調べを担当したA刑事(法廷では実名)が来ました」

弁護人「取り調べ担当がA刑事に代わってどう聞かれましたか」

被告「やはり同じく『どうして事件を起こしたのか』を聞かれました。今度は『よく分かりません』と言葉で答えることができました」

弁護人「それには?」

被告「『まあ、そうだろうな』と理解されました」

弁護人「『よく分かりません』とは、なぜ答えたのですか」

被告「事件直後は事件に関係あるなしにかかわらず、頭から吹っ飛んで、頭から整理がついていない感じでした」

弁護人「その後は?」

被告「刑事さんから、事件当日からさかのぼって何があったのかを話していきました。6月7日、6日と準備したこと、5日に(事件直前に働いていた)関東自動車工業で(作業着の)つなぎがなくなったことを話しました」

弁護人「それで何といわれましたか」

被告「刑事さんは『それが動機か!』とひらめいたようになり、私もそれが動機だったのかと思ってしまいました」

弁護人「そのときそう思ったということですが、6月5日に工場から家に帰ってからの記憶は思いだせたんですか」

被告「その記憶はないです」

《加藤被告は、勤めていた工場でつなぎが紛失した出来事が事件の動機になったという供述は、あくまで加藤被告自身が推測したことで、記憶していたものではないという主張を何度も繰り返していく》

弁護人「取り調べ当時は事件をどう思っていましたか」

被告「起こすべきでなかったと思っていたし、後悔がありました」

弁護人「取り調べで動機を聞かれましたが、自分として記憶はあったのですか」

被告「いえ、ありません」

弁護人「自分のことなのに記憶はないというのはどう思いましたか」

被告「自分としても事件を起こした手前、『記憶がない』『分からない』では無責任な気がするので、予想でも刑事さんと話をして真相を明らかにしたいと思いました」

弁護人「それで分からないことはどう話したんですか」

被告「覚えていることから推理してお話ししました」

弁護人「あなたからですか」

被告「私からのときもありましたし、取調官から『これこれこういうこと?』と話をぶつけられることもありました」

弁護人「6月9日ですが取り調べは誰が行いましたか」

被告「A刑事です」

弁護人「調書の説明はされましたか。どういうものでしたか」

被告「つなぎがなくなったのをきっかけに事件を起こしたという内容のものでした」

弁護人「記憶はありましたか」

被告「記憶ではなくて、6、7日と準備していたことから推測した話です。調書は推測ではなく記憶があったような表現になっています」

弁護人「そういう表現だったのに調書作成には応じたんですか」

被告「はい」

弁護人「文章表現がそうなっていたのに応じたのはなぜですか」

被告「訂正を求めましたが結局訂正されなかったし、事件の犯人として負い目があり拒否することができませんでした」

被告「私は『記憶がないので訂正を求めます』と伝えましたが、刑事さんから『6、7日と準備をしたのは5日につなぎがなくなったからじゃないの?』と聞かれ、『私もそう思いますが記憶はないです』と答えました。刑事さんは『いや、でも…』と堂々巡りのやりとりになったので、拒否できませんでした」

《弁護人の質問は検察官の取り調べ状況に移る。ここでもやはり、加藤被告は「つなぎ紛失が動機」は推測しただけで、記憶していたものではないと繰り返していく》

弁護人「6月10日に最初に検察官から取り調べを受けましたよね。担当は××検察官(法廷では実名)で、起訴されるまで担当した人ですよね」

被告「はい」

弁護人「最初の取り調べのことを聞きます。検察官から最初どういう説明がありましたか」

被告「警察と検察は違う組織ということ、言いたくないことは言わなくていいということ、推察したことと記憶していることは分けて話すこと、調書は裁判の証拠になるから大事だが、署名はしなくても良いけど、良ければしてくれと言われました」

弁護人「その日はどういうことを聞かれましたか」

被告「『6月5日につなぎがなくなったことで事件を思いついたのか』と聞かれました」

弁護人「それで?」

被告「警察と同じように、自分でもそう思うが、記憶しているわけではないと答えました」

弁護人「事件最中の記憶はどう答えましたか」

被告「2人トラックではねたのは覚えていて、少なくとも3人は刺したと話して、そのほかは覚えていないと話しました」

弁護人「この日取り調べを受けて、調書を作成されましたか」

被告「はい」

弁護人「6月5日の記憶についてはどうなりましたか」

被告「調書では6月5日に事件を思いついたことを記憶しているような内容になりました」

弁護人「それについて訂正は求めましたか」

被告「お願いはしましたが、やはり同じように『6、7日と準備したということは5日に思いついたんでしょ?』と聞かれ、訂正はしてもらえませんでした」

《加藤被告は、自らが起こした大事件にも関わらず、動機についてはあくまで記憶しておらず、推測したものだと繰り返した》

法廷ライブ5に続く

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