秋葉原殺傷 第19回公判
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《引き続き、加藤智大(ともひろ)被告(27)の取り調べの様子を録音・録画したDVDの再生が続いた。村山浩昭裁判長と2人の裁判官や検察官、弁護人はイヤホンで音声を聴きながら、手元の小型モニターで取り調べ状況を見ているようだ。だが、法廷内には音声は流れず、大型モニターには何も映し出されていない。法廷は静寂に包まれている》
《弁護人席の前の長いすに座る加藤被告も、傍聴人同様、再生の内容がまったく分からない状況だ。時折頭をかくほかは姿勢を崩さず、視線を落としている。村山裁判長はうつむきながらメモを取り続ける。向かって右側の女性裁判官は手元のモニターに見入っているようだ。左側の男性裁判官は左手でほおづえをつき、モニターを見ている》
《男性検察官は目を閉じたまま、再生されている音声に聞き入っている。女性検察官は手元の資料を確認しながら、時折、モニターをのぞき込む。弁護人もメモを取りながら録音を聞いている》
《沈黙が続く法廷で、傍聴人は退屈した様子だ。加藤被告をじっと見つめる人やメモを取る人、腕組みをしたまま目を閉じている人などさまざまだ。退席者も相次ぎ、半数近くの傍聴席が空席になった》
《午後3時半ごろ、検察官が立ち上がり口を開いた》
検察官「次の甲号証を再生します。録音時間は約33分間です」
《これを聞き、また、数人の傍聴人が退席した》
《検察官や弁護人が資料をめくる音が法廷に響く。村山裁判長はメガネを取ってモニターに顔を近づける。女性裁判官はハンカチで顔の汗をふいた。持参した本を読み始める傍聴人もいる。加藤被告は顔に手をやり、メガネの位置を直した》
《午後3時44分、ほとんど動かなかった加藤被告がおもむろにノートを取り出した。ボールペンを手に取り、ノートに何か書き始めた。指先で耳の後ろをかきながら、ペンを走らせていく。メモを取っているようだが、傍聴席からは書いている内容は見えない。加藤被告はほとんど脇目もふらず、約3分間にわたって書き続け、ノートを閉じた》
《午後5時8分、DVDの再生が終了し、裁判官、検察官、弁護人が一斉にイヤホンを外した。立ち上がった検察官が裁判所書記官に書類を渡す》
《村山裁判長はこの日の審理終了を告げた。加藤被告は無表情のまま傍聴席に一礼し、両脇の刑務官とともに法廷を後にした》
《次回の公判は8月4日午前10時から、この日と同じ東京地裁104号法廷で開かれ、引き続き証拠調べが行われる》
=(完)
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