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秋葉原殺傷 第19回公判
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《男性検察官は、加藤智大(ともひろ)被告(27)が事件3日前に職場で起こした“トラブル”について尋ねた。加藤被告は平成20年6月5日、当時働いていた関東自動車工業東富士工場で、自分のつなぎ(作業着)がなかったことから、誰かが隠したと誤解し、他人のつなぎを床に散乱させるなどした後、工場を飛び出したという》

検察官「あなたは6月5日の朝に出勤したが、つなぎが見つからず、他の人のつなぎを投げたり壁をけったりしたということですね?」

被告「けったのはドアです」

検察官「つなぎを隠されたと思い、頭に血が上ったのですか」

被告「当時はそう思っていました」

検察官「このときの怒りは、誰に向いていたのですか」

被告「当時は隠されたと思っていたので、隠した犯人に向かっていました」

検察官「どうして誰かが悪意を持って、あなたのつなぎを隠したと思ったのですか」

被告「掲示板でのトラブルなど、精神的なゆとりが少なかったからではないかと思います」

《加藤被告はこれまでの被告人質問で、「(掲示板に)自分のふりをして書き込むなどの荒らし行為をされた。大切にしていた(ネットでの)人間関係を乗っ取られ、奪われた」と、掲示板の利用をめぐるトラブルがあったことを明らかにしている》

検察官「犯人に思い当たる人は?」

被告「いませんでした」

検察官「つなぎ事件の後も、会社を辞めるつもりはなかったということでしたね」

被告「それは、(つなぎ事件の後に)工場を出たのは、やめるつもりで出たわけではなかったという意味です」

検察官「その後、辞めようと思ったことはありますか」

被告「勝手に工場を飛び出してしまったので、工場にはいられないのかな、という感じはありました」

検察官「掲示板には『作業場行ったらつなぎがなかった。やめろってか? 分かったよ』と書き込んでいます。これはネタですか? 本心ですか?」

被告「本心ではないです。書き込んだ文字通りのことを思ったわけではないですが、感情がそのまま出た感じはあります」

《被告のあいまいな返答に、検察官が再び質問した》

検察官「本心ではない…。そうすると、ネタということですか」

被告「ネタ臭(しゅう)はします」

《聞き慣れない言葉だったのか、検察官が「ネタ臭?」と聞き返すと、加藤被告は「ネタのような感じということです」と説明した》

被告「(書き込み内容に)自虐的な感じはありました。たとえば、『ざまあwww』という、ネットでよく使われる返信が期待できるようなものです」

検察官「あなたが本屋で買った雑誌には、サバイバルナイフが載っていましたね?」

被告「よく覚えていませんが、広告が載っていました」

検察官「そこにあなたがナイフを買った福井県の店の広告は載っていましたか」

被告「はい」

検察官「他の店の広告は載っていましたか」

被告「ナイフかどうか分かりませんが、エアガンのような広告はありました」

検察官「静岡から福井まで行ったのは、ほしいナイフが見つかったからですか」

被告「広告を見ていたときの記憶はないですが、スローイングナイフはネタになるから買おうと思いました」

検察官「それで、買いに行こうと思った?」

被告「買いに行くというか…。最初は、通販で買おうと思いました」

検察官「あなたは、その雑誌を同僚に見せたりはしていないですよね?」

被告「はい」

検察官「刃物を買う店を見つけるためだけに、その雑誌を使ったということですか」

被告「結果としてそういうことになりました」

検察官「スローイングナイフを買ったのは、友達との話のネタになるからですか」

被告「はい」

検察官「それだけですか」

被告「はい」

《検察官は、加藤被告が秋葉原事件を起こすための準備としてナイフを買いに行ったのではないか、ということを指摘したいようだ》

検察官「6月5日、あなたはつなぎ事件の後に寮で『スローイングナイフを通販してみる。殺人道具ですよ』と書き込んでいます」

被告「はい」

検察官「しかし、10時44分には、通販ではなく翌日に福井に買いに行くと書き込んでいます。この2時間で、6月8日に事件を起こすことを決めたのではないですか」

被告「福井に行くことを決めたということはあると思いますが、事件を起こすと決めたことはありません」

検察官「あなたは、つなぎ事件は秋葉原事件と関係ないと話していましたが、本当に無関係なのでしょうか」

被告「はい」

検察官「ではなぜ、つなぎ事件のとき、短時間でナイフを買うことを決めたのですか」

被告「それまで(秋葉原)事件のことを漠然と考えたところ、つなぎの件で仕事を失い、事件より優先できるものを失ったから事件に向かい始めたのではないかと。そう思います」

検察官「6月6日はなぜ仕事に行かなかったのですか」

被告「(仕事を)辞めるつもりではなかったのですが、つなぎの件で工場を飛び出してしまい、『もう行けない』となっていた感はあります」

検察官「あなたが当時いた寮の最寄り駅はどこですか」

被告「JRの裾野駅です」

検察官「あなたは6月6日、裾野駅から三島へ行き、新幹線で名古屋に行き、ヨネハラで乗り換えていますよね?」

《検察官は滋賀県のJR米原(まいばら)駅のことを言いたかったようだ。読み間違えたに気づいた加藤被告が「あ…。すみません、マイバラです」と遠慮がちに指摘した。検察官も「あ…失礼しました」とした上で、質問を続けた》

検察官「福井県に行って森田という駅で降り、タクシーで店に向かいましたね?」

被告「はい」

検察官「往復で旅費はいくらかかりましたか」

被告「ちょっと覚えてないですが、2万円前後だと思います」

検察官「時間はどのぐらいかかりましたか」

被告「往復8時間ぐらいです」

検察官「6月6日朝の所持金はどのくらいでしたか」

被告「よく覚えていません」

検察官「だいたいでも覚えていませんか」

被告「ちょっと記憶からでは思いだせません」

法廷ライブ3に続く

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