i-mobile
秋葉原殺傷 第19回公判
6/11

《検察官の質問は、加藤智大(ともひろ)被告(27)がインターネットの掲示板に書き込んだ内容や、殺意の有無について移る。背筋を伸ばしたまま前を向いて質問に答える加藤被告だが、検察官の鋭い質問に時折沈黙する》

検察官「弁護人からの質問で、『取り調べの際に殺すつもりで』と掲示板に書いたといわれたことが不満だという話をしていましたね」

被告「はい」

検察官「あなたは殺すつもりではなかったのですか」

被告「そういう趣旨ではなく、殺すことが目的だったわけではないという話がしたくて、そう話をしました」

《身体を振るわせるようにしてゆっくりと答える加藤被告》

検察官「『殺すつもりで』は『殺す目的で』とは少し違うのでは? あなたは事件前に掲示板のスレッドタイトルを書き換えていますね?」

被告「はい」

検察官「分かっていますね」

《諭すようにして加藤被告に詰め寄る検察官》

被告「はい」

検察官「殺すつもりで事件を起こしたということではないのですか」

《10秒ほど沈黙が続く》

被告「もし、正確にスレッドタイトルを編集するとすれば、秋葉原で人を殺傷しますよと、その通りに書けば文字通りになると思います」

検察官「どういうことですか。何が何でも殺すわけではないということですか」

被告「掲示板に書いた『殺す』は文字通りの殺すではなく、人に危害を加えるという意味での殺すです」

検察官「この裁判では殺意が問題になっているわけではありませんが、あなたは人がたくさんいる交差点にトラックで突入したわけですよね?」

被告「はい、2トントラックで…」

検察官「トラックで突入すれば殺す可能性が高いわけですよね? 話を変えます。事件の間にこの人は殺さないでけがをさせる程度にとどめておこうと考えたことはありますか」

被告「そうしたことは考えたことはありません」

検察官「(秋葉原で事件の最中に)××さん(法廷では実名)に警棒で一発殴られましたよね?」

《××さんとは、防刃衣をナイフで切られながら、加藤被告を現行犯逮捕した巡査部長だ》

被告「はい」

検察官「その直前の記憶がなくなっているのですか」

被告「はい」

検察官「××さんに殴られたとき、××さんが警察官だということは分かっていましたか」

被告「××さんに警棒で殴られたあと、警察官と分かっていない状況から、分かった状況に切り替わったというわけではないので、最初から分かっていたのだと思います」

検察官「あなたは××さんとチャンバラのようなことをしましたか。××さんとチャンバラをしている様子を見たという目撃者も証人もいますが、その事実はあったと思いますか」

被告「そのように証人の方がおっしゃるので、何らかの行動をしたと思っています」

《言葉に詰まり気味の加藤被告。裁判長席前の女性書記官が交代し、20秒ほど中断する。村山浩昭裁判長が検察官の方を向いて目で再開を促す》

検察官「中央通りからの道のりで、××さんと向かい合っていたという記憶はありますか」

被告「あります」

検察官「どうして向き合っていたのでしょうか。記憶はありますか」

《沈黙が続く。事件の状況を思いだしながら言葉をつなぐ加藤被告》

被告「よく分かりません」

《別の書類を開きながら質問内容を変えようとする検察官》

検察官「えーと…。甲号証の写真を被告人に示したいのですが、よろしいですか」

《村山裁判長がこれを了承し、検察官が証言席の横で加藤被告に写真を見せる。法定内の大型モニターに××さんの制服姿の写真が映し出される》

検察官「写真が誰か分かりますか」

被告「私を現行犯逮捕した××さんだと分かります」

検察官「あなたを逮捕した当時の格好ですが覚えていますか」

被告「よく覚えていませんが、そうおっしゃるならそうだと思います」

検察官「××さんの様子を見て事件当時と違っているところはありますか」

被告「よく分かりません」

《検察官は別の写真を映し出した。制服を着た××さんの拡大写真だ。耐刃防護衣の左脇腹付近が傷で破損している》

検察官「防護衣のテープはあなたがナイフで攻撃した痕だと××さんは証言していますが、記憶はありますか」

被告「よく分かりません」

検察官「今は、あなたがナイフで傷つけたものだと分かりますか」

被告「はい」

検察官「耐刃防護衣の3文字が見えますが、なんと書かれていますか」

被告「警視庁と…」

《大型モニターの写真が消され、検察官が加藤被告の側を離れる》

検察官「荻野さんにナイフを捨てろといわれるまで、右手に持ったナイフのことは忘れていたのですか」

被告「記憶していませんでした」

検察官「ナイフを捨てろといわれ、捨てたのはなぜですか」

被告「なぜかといわれても理由はよく分かりません」

検察官「ピストルで撃たれることに恐怖を感じたのではないですか」

被告「『撃つぞ』とは言われましたが、銃は向けられていませんので…」

検察官「どうしてナイフを捨てたのかも分からないのですか」

被告「警察官に捨てろといわれたので捨てました」

法廷ライブ7に続く

下記広告のクリックもお願いします。