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秋葉原殺傷 第19回公判
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《約20分の休憩後、加藤智大(ともひろ)被告(27)が、村山浩昭裁判長に促され入廷した。男性弁護人による加藤被告への再質問が始まった。これまでの回答の確認などが行われていく》

弁護人「以前の被告人質問では、(掲示板の)荒らしには無視が原則と話していましたが、なりすましには無視はできなかったのですか」

被告「いや、それは無理でした」

弁護人「それはどうしてですか」

被告「なりすましはその…放置しても他から見れば私(の書き込み)に見えるわけで、私としてもなりすましに対してあえて返信することで、他の人から見れば自分で自分に返信するように見えるという、そういうおかしな状態にすることで、なりすましに気づいてもらおうとしました」

弁護人「(荒らしをする人は)なりすましの書き込みをあなたのものと思って反応していたとのことだが、荒らしは、なりすましの書き込みにどういう反応をしたのですか」

被告「なりすましを私と勘違いして、それに腹を立てて、荒らし行為をすることもありました」

《弁護人は、法廷内のモニターに掲示板の書き込みの記録データを映し出し、加藤被告に「これはなりすましの書き込みですか」「これは荒らしの書き込みですか」と確認していく》

《荒らしは書き込み欄ではなく名前を入力する欄に、「精神科行け。それ以外の道なくなった」などと書き、書き込み欄には改行を多数繰り返すなどの手口で嫌がらせの書き込みをしていた。これに対し、なりすましは「ブサイクは精神科にさえ行きません」などの返事を書き込んでいた》

弁護人「あなたに対する誹謗(ひぼう)中傷の書き込みは荒らしではないのですか」

被告「誹謗中傷は荒らしではなく、私に対する本音というかストレートな意見をぶつけてくるものなので、むしろ歓迎でした」

弁護人「取り調べの録音、録画の内容で確認します。平成20年10月9日に録音されたものについて、検察官から『不満はありますか?』と聞かれているのに、『大丈夫です。よく話を聞いてもらえました』というやりとりがあったのですが、どういう趣旨だったのですか」

被告「当初はともかくとして、私が話したことを聞き手としてよく聞いてくれました」

《質問者が別の男性弁護人に交代した。加藤被告が事件直前に働いていた静岡県の関東自動車工業で、作業着の「つなぎ」が紛失して加藤被告が激怒した出来事と、事件の関係などを確認していく》

弁護人「検察官からの質問で、あなたの書き込み一覧を示されたときに、ログ(書き込みの記録データ)を見ないとわからないと答えていたが、なぜですか」

被告「書き込みは、掲示板の雰囲気や、ほかの人の書き込みに対する返信や会話の流れが関係してくるので、総合的に見ないと正しく判断できないので」

弁護人「現行犯逮捕した(巡査部長の)××さん(法廷では実名)と対峙(たいじ)したときのことですが、警棒で殴られたとのことですが、そのときに警察官だと気づいたということですか」

被告「はい、そうです」

《弁護人は、事件の被害者への殺意を再度確認する》

弁護人「殺すつもりはなかったのですか」

被告「警察署での取り調べで刑事さんが誰でもいいから殺したかった的な、人を殺すことが目的のような方向性で話をされたので、そうではなく、殺すことを目的としたわけではないと返事をしました」

弁護人「しかし、法的には殺意があるというのはわかっていますか」

被告「先生から、殺意の意味を教わったので、殺意を否定する気はないです」

弁護人「質問の中で、つなぎ(が紛失した)事件は、事件と無関係とのことでしたが、その意味を説明してください」

被告「関係するかしないかというのは、どこで線を引くのかなと思っています。つなぎ事件のせいでやらない理由がなくなったという意味で、関係するといえます。たらればの話になりますが、もしつなぎがなくなっていなければ、仕事に行っていて、6、7日と準備をせずに事件は起こらなかったかもしれないですが、(つなぎが)なくなったから事件を起こしたというつもりはないです」

弁護人「被害者の遺族に出した謝罪の手紙ですが、今から1年ぐらい前、事件から1年ぐらい後に書いたものですが、当時はどういうつもりで書いたのですか」

被告「うまく説明できないのですが、自分の中から、謝罪を申し上げたいとかいろんな感情が出てきてそれをそのまま手紙にしたような感じです」

弁護人「事件から2年ぐらいたちますが、何を考え、何をしてきましたか」

被告「いろいろと開示された証拠書類を読みまして、記憶を少しでも戻そうと努力していましたし、自分で自分に『これはなぜなのか』と繰り返すことでどうして自分が事件を起こしたのかを考えていました」

弁護人「終わります」

《弁護人の質問が終了した。裁判長は弁護人、検察官にこれ以上の質問がないことを確認した上で、向かって右側に座る女性裁判官の質問に移った。凶器として身に付けていたナイフや、加藤被告が事件の動機だと主張している掲示板での人間関係について質問していく》

裁判官「今回の事件で犯行(に使ったもの)以外にも複数のナイフを身に付けていましたが、なぜですか」

被告「…合理的に説明できませんが、思いつきでポケットや靴下に入れました」

裁判官「どの時点から身に付けていましたか」

被告「事件の朝、レンタカーを受け取りに行って、いったんアパートに戻り、そのときに身に付けました」

裁判官「そのときの記憶は覚えてないのですか」

被告「よくわかりません」

裁判官「事後的に振り返って、どうしてだったのか思うところはありますか」

被告「おそらくですが、あるいはその何か…予備的な意味でたくさんあった方が良いと、そういう気はします」

裁判官「動機などの関係で掲示板での人間関係が重要だと言っていますが、具体的にはどういうことですか」

被告「2点あります。1点は本音で気を使うことなく、私も相手も気を使わず言いたいことをいう関係というのと、もう1つは相手から自分の所に来てくれるという関係です」

裁判官「相手の方からというのは、掲示板上で『この人が来ている』というのは分かっていたのですか」

被告「現実には分かりませんが、『いつも来てくれるあの人』という感じでした」

裁判官「ハンドルネーム(掲示板上での名前)を使っていなくても分かるんですか」

被告「分かる人は分かりますが、私のスレッドに来ていた人はハンドルネームを使っていました」

裁判官「群馬の女性や掲示板の管理人とは実際に遊んだそうですが、そういう関係と(掲示板での人間関係)は違うのですか」

被告「あくまで掲示板での人間関係ということです」

裁判官「荒らしやなりすましが頻発して不快だったなら、ほかの掲示板で人間関係を作ればよかったのではないですか」

《弁護人も質問した内容だが、裁判官も再度確認した》

被告「ゼロから人間関係を作ることになるので、時間をかければできますが人間関係を失ったからといって、すぐ次というわけにはいきませんでした」

裁判官「本音で話ができるというのはどういったことですか」

被告「現実では、『この話題は不謹慎』とか『相手が傷つくかも』とか考えて自重したりすることもありますが、そうしたことを気にせず、言いたいことを言えるというか、そういう関係でした」

《女性裁判官は掲示板での人間関係について、さらに確認の質問を続けていった》

法廷ライブ10に続く

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