京都、滋賀両府県で1990~91年、資産目当てに2人を殺害したとして強盗殺人罪などで死刑が確定した松本健次死刑囚(67)が、国を相手に、再審請求中は死刑執行を拒否できることの確認を求める訴訟を大阪地裁に起こした。
31日の第1回口頭弁論で国側は、請求に対する意見を留保した。
訴状などによると、松本死刑囚は兄と共謀、いとこと近隣女性の計2人を殺害し、不動産の権利書類などを奪ったとして起訴。1審・大津地裁が93年に死刑を言い渡し、2000年に最高裁で確定した。05年以降、再審請求を繰り返し、現在は7度目の特別抗告中。
松本死刑囚は、再審請求中の死刑執行が「裁判を受ける権利を保障した憲法に反する」と主張している。
松本健次さんの場合
死刑判決を受けて、大阪拘置所に収監されている松本健次さんは、精神障がいと知的障がいを持つ死刑囚の1人です。罪は、兄と行ったとされる2件の強盗殺人でした。
健次さんは、母親の胎内にいるときに水俣病にかかったために、手足に感覚障がいや軽度の知的障がいを持っています。熊本に生まれ育ち、中学卒業後、調理師や土木作業員として生計をたてていました。
兄はそんな健次さんに、犯行を手伝わせました。
健次さんの兄は、子どものころから健次さんに対し暴力を使い、言うことを聞くように強要してきました。
はじめの事件が起きた年、金に困った兄は、従兄弟から不動産を奪おうと、健次さんを連れて従兄弟の家に行きました。健次さんは、兄の目的をよく理解できずに、従兄弟の殺人と不動産の売却に巻き込まれてしまいました。
その後、不動産の売却で得た金の大半をわずか1年で、兄は旅行や高級車の購入のため使い果たしてしまいました。
金に困った兄は次の事件を計画し、また不動産を奪ってお金を得ようと、姉の家の近所の女性を殺害することにしました。この時も、健次さんは兄が強要したために、現場まで行き、手伝いを命じられました。
事件が発覚した時には、兄は健次さんを警察に出頭させて、自ら命を絶ってしまいました。健次さんは主犯格とされ、1人ですべての責任を負わされ、死刑判決が言い渡されました。
弁護団によれば、健次さんは殺人の実行行為に関与していないにもかかわらず、健次さんが行ったものだと誘導的な取調べが行われたとのことです。
現在の健次さんは知的障がいだけでなく、長年にわたる狭い独房生活から拘禁症を患い、重い精神疾患を発症しかけていると診断されています。弁護人を含め、人とのコミュニケーションも大変厳しい状況になっています。
健次さんは、犯した罪に対しては、責任をもって償わなければなりません。しかし、本当に死刑以外に選択肢はないのでしょうか。
第四百七十五条 死刑の執行は、法務大臣の命令による。
○2 前項の命令は、判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない。但し、上訴権回復若しくは再審の請求、非常上告又は恩赦の出願若しくは申出がされその手続が終了するまでの期間及び共同被告人であつた者に対する判決が確定するまでの期間は、これをその期間に算入しない。