犯罪急増の裏側にある、ベトナム人留学生の知られざる現実に迫ります。
田中:去年(2016年)万引きなどの犯罪で検挙されたベトナム人留学生は1,208人。これは、5年前の8倍以上に上っています。背景には、留学生そのものの数が急増している実態があります。アルバイトをしながら日本語学校などに通うベトナム人留学生の数は、この5年でおよそ28倍の7万5,000人。外国人留学生の中で最多です。経済成長が進む中国からの留学生を抜き、去年初めてトップになりました。

(中略)
急増する日本語学校 教育より労働者集め?
市川不二子(NHK記者)
田中:NHKが調べたところ、日本語学校全体のおよそ3割、200校以上がこの5年間に新設されたことが分かりました。
取材に当たった市川記者。
日本語学校急増の裏には、どんな実態があるんでしょうか?
市川記者:新設された日本語学校を調べたところ、建設業者や人材派遣業者、それに介護事業者といった業種からの参入が相次いでいることが分かりました。ある日本語学校の校長は、「学校を経営する介護事業の会社の労働力として活用するために開校した」と話していました。取材からは、日本語学校をいわば労働力の受け皿として利用しようという動きが、一部で広がっている実態が見えてきました。
田中:こういった状況を国はどう見ているんでしょうか?
市川記者:授業時間や教員の数などの基準を満たしていれば、ほかの業種から参入しても問題はないとしています。しかし法務省は、留学生が法律の上限を超えて、長時間働くことがないよう、学校側に周知の徹底を求めるなど、対策を進めています。また、借金返済のために上限を超えるアルバイトをしなくても、授業料が支払えるのかどうか、留学生が提出する書類の審査を厳格化しているんです。ただ、留学生が急増する中で、海外で作成された全ての書類をチェックするのは難しく、実体がつかみにくいのが実情なんです。
書類の偽造について取材されたそうだが、実態は?
出井さん:この書類の中には、留学生が銀行の預金残高だとか、親の年収の証明書も出さなければいけないという決まりがあるんですけれども、私が取材を通じて入手したものを見ると、ほとんど数字が同じなんですね。
(いろんな留学生の数字が同じ?)
しかも、普通に考えて、ありえないほどの金額が書いてあるわけですね。
それをなぜ見抜けない?
出井さん:それは、偽造とはいえないんですね。というのは、銀行の証明書であれ、また向こうの行政機関が出した証明書であれ、本物のはんこが押してあるんですよね。結局、賄賂を払えば、そういった書類が簡単に作れてしまうと、それに対して日本の側も、なかなかそれが偽物だとは言えない。本物なわけなので、偽物だと言えないということですね。
国は、労働時間の制限があることを周知するという対策を打ち出しているが、こういった対策は十分だと言える?
出井さん:いえ。それは、もう今、来ている留学生たち、これはベトナムに限らずなんですけれども、28時間しか働けないということを分かってきています。分かっているんだけれども、それだけじゃ借金を返せないということで、その上限を超えて働いてしまうというのが現状だと思います。
国は、その労働時間の制限に関して、新しい対策の検討も進めている?
出井さん:この28時間という制限を延ばして、35時間、また40時間に増やしていこうという議論も一部あるわけですけれども、これは、私は本末転倒も著しいことだと思います。結局、日本人が嫌がる仕事にベトナム人を使いたいということなんですが、そうじゃない、根本のところを改めるべきだと思います。