今回の口永良部島の活動について、これまで数多くの巨大地震、噴火を予知し的中させてきた、琉球大学理学部名誉教授の木村正昭氏は、こう説明する。
「太平洋プレートが押してくるプレッシャーによるものであることは、間違いありません。このプレッシャーは7年前、東日本大震災という超巨大地震を引き起こしましたが、決してあれで終わりというわけではなく、第二、第三の巨大地震が準備されているはずです。そうでなければ、大平洋プレートは大陸側のユーラシアプレートの下にもぐって行けませんからね。この太平洋プレートからのプレッシャーは日本列島全体にかかっているわけですから、口永良部島が噴火しそうになっているのは、何らかの危険を知らせるシグナルと言えるのです」
折しも昨今は、世界中で火山活動が活発化している。日本で一昨年4月に熊本地震が発生した直後には、チリのビジャリカ山、メキシコのコリマ山、アラスカのクリーブランド山が同時に噴火し、チリ、エクアドルでそれぞれM5.6とM7.8、南太平洋のバヌアツでM5.9の大きな地震が起きている。今年に入ってからも、日本では草津白根山や霧島連山の新燃岳、海外ではフィリピンのマヨン山やハワイのキラウエア火山などが相次いで噴火した。
「これらはすべて、太平洋をぐるりと囲んだ環太平洋造山帯と呼ばれる地域で起きている。つまり、太平洋プレートやその周辺のプレートによる大陸側へのプレッシャーが影響しているということです。そのため、口永良部島の活動の活発化は、その後の大きな動きの序章にすぎず、後に鬼界カルデラの破局的な噴火が待ち受けているとの見方もできるのです」(前出・サイエンスライター)
そうした中、環太平洋造山帯に含まれる日本は「関東圏でもそうですが、巨大地震が今起きても不思議ではない、待ったなしの状況」(前出・木村氏)だという。
防災ジャーナリストの渡辺実氏も、こう警鐘を鳴らす。
「東日本大震災がその再来と言われている貞観地震(869年)が起きた時代は、まさに天地動乱でした。この時と同じく、今は地殻が大きく変動しており、今後も当時を彷彿とさせる地震や噴火がこれでもかというほど起きるでしょう。貞観時代と比較すると、現在起きていないのは相模・武蔵地震のような関東での地震、仁和地震にあたる南海トラフ巨大地震、そして、富士山噴火になります」
864年に起きた富士山の貞観大噴火は、記録に残る中でも最大規模とされ、富士五湖の西湖と精進湖、さらには青木ヶ原樹海もこの時に形成された。木村氏は、数々の巨大地震の最終章として用意されているのが、富士山噴火だと見る。
「私は太平洋プレートによるストレスが何らかの地殻変動によりいったん解消された後に、今度は富士山がプレッシャーを受けると見ています。富士山自身、今も噴火に向かって準備が進んでいるが、それが最後の一押しになるかもしれません」(木村氏)