九十九里浜一帯で9~10月、山田容子さん(75)=八街市八街ほ=の切断遺体が見つかった事件で、長男の基裕容疑者(37)が死体損壊・遺棄容疑で逮捕され、24日送検された。捜査関係者らによると、基裕容疑者が遺体発見後、業者に依頼し、自宅の風呂場のリフォームをしていたことや、11月に入り車を買い替えようとしていたことが判明。千葉県警は風呂場で遺体を切断して車で運び、その後に証拠隠滅を図ろうとしたとみている。
遺体切断にのこぎりが使用された可能性があり、基裕容疑者の供述どおりの場所からのこぎりが見つかっていたことも分かった。容子さんは生前、周囲に「息子とけんかばかり」と不満を漏らしており、県警は親子間のトラブルが動機につながったとみて調べる。
近隣住民や捜査関係者によると、容子さんは10年ほど前に夫と死別。基裕容疑者夫婦と同居するようになったが、事件当時は親子2人だけで暮らしていた。容子さんは「けんかばかりで話をしたくない」と話していたという。
基裕容疑者の最近の様子について70代男性は「性格が短気になったように感じた。家から大きな声も聞こえるようになっていた」と話す。
登記簿によると、自宅の土地と建物は2人が共同で所有していたが、9月中旬、容子さんの権利分が容疑者に信託され、移された。捜査関係者によると、県警もこうした状況を把握、事件との関連の有無を慎重に調べる。
県警は、基裕容疑者が9月26日から27日ごろまでの間、自宅で遺体を切断し遺棄したとみている。70代女性は同月下旬ごろ、容子さんが自宅玄関で作業する様子を目撃している。近所の人によると、10月になって基裕容疑者が「母親は友人の所に行っている」と説明していた。
近所の人から「もとくん」と親しみを込めて呼ばれることもあった基裕容疑者。長女が同級生だという60代女性は「娘が困っているときに(基裕容疑者に)助けてもらったことがある。優しそうだったのに」と悲しげな様子で話し、近くに住む女性(73)は「親子2人で出掛けて仲が良いと思っていた。何かあったのなら相談してほしかった…」と肩を落とした。
基裕容疑者は11月24日午前9時ごろ、東金署から送検された。周囲を警察官に囲まれ、フードをかぶり背中を丸めてうつむきながら同署の裏手に止めた車両に乗り込み、表情をうかがうことはできなかった。